本年度の研究は、2006年にPalgrave Macmillan出版社(London & New York)から出版予定の英語による単著、Gender and the Construction of Female Subjectivity in Renaissance Literature : Creating Their Own Meaningsの第一章の最終部で扱われる、黒人と白人女性の結婚の表象を中心とした。シェイクスピアを始めとする男性作家とMary Wrothを中心とする女性作家による異民族間の結婚の表象を比較し、その違いの意味を当時の文化的・社会的文脈のなかで女性の主体構築に焦点を当てて探究した。夏休みには1ヶ月滞英し、日本では手に入らないイギリス・ルネサンス期の旅行記、女性論、ロマンスや女性による日記、手紙の手稿を大英図書館や貴族のアーカイブで調べた。これらを資料にraceとgenderの観点から、特にWrothのUraniaにおける白人のヒロインと、肌は黒いがMoorではないモンゴル系民族のRodomandroとの結婚の表象の意味を、主にシェイクスピアのOthelloとの比較から検討した。この成果は論文‘Gender and Representations of Mixed-Race Relationships in English Renaissance Literature'にまとめ、2005年4月初めにケンブリッジ大学で行われる国際学会で発表。また、2006年7月、ブリスベン(オーストラリア)で開催される第8回国際シェイクスピア学会で、セミナー"World Feminisms and Shakespeare Studies"をCarol Neely教授(米)、Kathleen McLuskie教授(英)と共同で企画し、座長を務めることが2005年1月に公式に発表され、このセミナーの本格的な準備にとりかかった。
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