研究概要 |
本年度は、自然神学詩や18世紀の詩およびロマン主義詩全般によく見られる「呼びかけ」(Vocative)について研究をした。詩においては通例、呼びかけの語(Vocative)は、呼びかける対象物を出現せしめる。ところが、ロマン派の詩においては、かならずしも対象物を出現せしめるだけではない。ロマン派を代表する(1) Wbrdsworth,"There was a boy",(2) Shelley,"Ode to the West Wind",(3) Keats,"Ode on a Grecian Urn",(4) Lord Byron,"The Colosseum episode" from the Canto IV of Childe Harold's Pilgrimageのなかに現われる(広義の)詩人の自画像と解される詩行を見ると、それらがそれぞれの詩人独自の詩論の特徴を反映しながらも、全体として、共通するロマン主義的特質を表わしていることがわかる。その特徴とは、呼びかけの語によって対象物が顕れると同時に、そこに呼びかける主体または詩人が理想とする自画像もまた顕れてくるということである。これは、18世紀詩からロマン主義の詩へ変化してゆく際の非常に重量な特徴である。ロマン派における自我意識の拡大を如実に反映しているからである。これが、4年間におよぶ自然神学詩をはじめとした18世紀詩からロマン主義の詩へ移行する過程をたどった本研究の結論である。 本年5月に中京大学で行なわれる、日本英文学会77回大会シンポジウム第二部門「詩人の詩人論」(司会 神戸女学院大学教授 山田由美子教授)において、「"Egotistical Vocative"-あるいは、呼び出されたロマン主義的理想の自画像」と題して口頭発表する予定である。
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