ホーソーンの特性は、<小説>でなく、<ロマンス>という元来ヨーロッパの伝統的な語り形式である文学ジャンルを主張する点にある。この研究ではホーソーンが希望するロマンスの読みの態度に忠実に従い、ルネッサンス精神史の中で、『緋文字』とそれ以後のロマンスを読む。具体的にはホーソーンの文学作品のテクストを、作品が背景とする時代と、作家が生きた時代の歴史的様相をコンテクストとして読むのだが、その読みは時代を超えて繰り返される真実への憧れの表象へと収斂する。そこで本研究はルネッサンス文化の特徴である図像的アプローチを取る。 今年度の研究実績は次の通りである。 (1)研究環境の整備 a.パソコン関係の機器を揃えた。b.書籍では入手困難なアメリカの古い時代の資料をマイクロフィルムで購入した。C.ルネッサンスの歴史・文化に関する資料を購入した。 (2)現地での資料収集と調査 ヨーロッパ・ルネッサンス文化の表象としての都市、建築、絵画を確認するために、3月末に大陸に出かける。 (3)社会への還元 10月26日の九州英文学会大会シンポジウム「ホーソーンとヴィジュアル・アーツ」にて招待講師として研究発表を受け持った。ホーソーンの作品におけるルネッサンスの肖像画の影響をテーマにして報告した。 (4)授業での実践 ホーソーンの作品を文学的伝統の中で読み、視覚芸術への興味を促した。
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