研究概要 |
1990年代から2000年初めにかけ、コンピュータコーパス(実際に使われた言語の電子資料)は、言語研究に多くのデータを供給し多大な貢献をしてきたが、その間、英語教育のために学生に使用させることはほとんどなかった。本研究では、英語の授業-英語4技能を伸ばす一般英語教育と特殊目的のための英語教育(ESP)-にコーパスを導入する方法を、意義から考え、研究・実践し、さらに、基礎研究として、語彙・文法研究、科学論文におけるディスコースと英語表現の研究を行った。コーパスを英語教育に導入する長期的目標として、指導者なしに英語を使う際に、特に英語を書く際に、辞書とともにコーパスを用いるようになること、短期的目標として、大量の用例から、表現を習得するとともに、英語使用の各種規則を自ら発見することを設定した。 British National Corpus(BNC一億語)を、英語を専門としない学生対象のリーディング、リスニング系科目で、教科書に出てくる英語表現について、(1)辞書情報の補完、(2)知識の確認と定着、(3)productionのために、コーパスを学生に使用させ、辞書にはない語句の意味は、コーパスの用例から考えさせた。ESP教育のために、英語論文作成をめざし、論文に独特の表現をBNCで学生に調べさせるとともに、学術論文における筆者の表示・非表示表現(いわゆるeditorial weの使用傾向、this paper/articleと動詞の関係)をインターネット上で読める論文をコーパスとして利用し、また、独自のコーパスを作成し、調べ、成果を発表した、。さらに、Brown, LOB, Frown, FLOBコーパスを用いた、アメリカ英語とイギリス英語の綴り字の相違とその30年間の変化を、学生に用例を検索させ、用例から何が言えるかを考えさせる指導法や、Lancaster/IBM Spoken English Corpus (SEC)を使用した、強勢移動(stress shift)の規則を学生に見つけさせる、発見指導法を考案、実践した。
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