1.John Davidsonのバラッド詩研究について 不毛と言われるスコットランド文学の19世紀の趨勢を、Kart WittigとEdwin Morganの視点の異なる二つの論から検討して、「カレドニア的相反」と「労働者詩人の時代」という特色にまとめ、さらに、デイヴィッドソンのバラッド詩を例として、これまで看過されてきたバラッド詩の系譜の存在を19世紀の新たな視点として打ち出した。以上は平成15年度実績報告に記した通りであるが、掲載誌に変更がおこったため、タイトルの変更も含めてより的確な論考に修正を行った。デイヴィッドソンの作品には、ウィティッグとモーガンの提唱する特色がもれなく現れており、それがバラッドの模倣詩という表現形式による点が注目に値する。 2.ボーダー・バラッドの定義付けについて 伝承バラッド編纂の金字塔F.J.Child編The English and Scottish Popular Ballads(1882-92)に収められた作品305篇中60篇あまりを占める「ボーダー・バラッド」と呼ばれる作品群について、うたわれるテーマと内容の特色をまとめ、ボーダーの地理を特定し、詩の背景にある文化と慣習について解説し、ボーダー・バラッドの定義付けを行った。 3.チャイルド・バラッド全訳プロジェクトについて 時代の隔たりと地域の特殊性のためにアクセスが困難であったチャイルドのバラッド編纂集305篇の全訳プロジェクトとして、全3巻中の第1巻を4月に刊行予定となった。第1巻は翻訳作品102篇と各作品の解説から成る。 4.バラッド入門書の刊行について 現代までうたい継がれているバラッドから代表的な作品20篇を選び、英語をモダナイズし、それぞれに解説と語註を付け、現代風にアレンジした音楽を付けて、バラッドの入門書として刊行した。
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