研究課題
基盤研究(C)
本研究では、18世紀後半から19世紀初頭にかけてのイギリスロマン主義の時代における自然科学の発展と、その文化全般への影響を視野に入れて、従来ロマン主義においては対立すると見られた詩と科学が「対概念」(dual concept)として捉えうる点に着目し、この対概念に対応する詩や哲学に関する理論を分析し、この概念の文芸作品における表象を明らかにすることを目的とした。平成14年度には、詩と科学の対概念についての理論的アプローチとして、『リリカル・バラッズ』第二版のワーズワスによる序文、および第二版出版当時のコールリッジの科学への関心、およびデイビーなどの化学者との交流ついて検討した。また、コールリッジと数学者ハミルトン、およびコールリッジの「方法の原理」について事実関係を整理し、検討を加えた。平成15年度には、昨年度からの研究を受け継いだ形で、イギリスロマン主義における詩と科学の対概念についての理論的枠付けを行うと同時に、この対概念が文学作品上の表象として結実していく過程を、キーツ、シェリーなどのロマン主義第二世代の作品について考察した。平成16年度には、これまでの研究成果をうけて、イギリスロマン主義作家における詩と科学への共通理解などについて総合的に検討した。この中で、コールリッジの「方法の原理」を、詩と科学を相互に補完的な精神的な営みとして把握するための重要な概念を提出しているものとして位置づけた。これらの研究成果は、国内学会および国際学会において口頭発表し、また学術論文として発表している。詩と科学を相補的な概念として詩論や作品中に機能していると考えることによって、イギリスロマン主義における科学の影響への新しい視野が開けたと考えている。ロマン派において詩と科学が相互に連絡するものとしてとらえられていることは、ワーズワスの詩論や、コールリッジの方法論、およびシェリーの詩論などで確認できる。今後の課題としては、詩と科学の対概念が抽象的なものであるため、個々の具体的な表現の分析に関しては、この対概念を表現上可能にする表現原理を明らかにすることがあげられる。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
Voyages of Conception : Essays in English Romanticism『イギリスロマン派学会30周年記念論文集』
ページ: 168-181
Voyages of Conception : Essays in English Romanticism (Tokyo : Kirihara Shoten)
文学研究科紀要 同志社女子大学大学院 4
ページ: 113-129
Coleridge Bulletin : The Journal of the Friends of Coleridge 24
ページ: 68-71
Papers in Language, Literature, and Culture of the Graduate School of Doshisha Women's College of Liberal Arts Vol.4
Coleridge Bulletin : The Journal of the Friends of Coleridge Vol.24