研究概要 |
平成14年度に重点的に研究したのはジョージ・・バーミンガムとグレン・パタソンのふたりだった。 現在、バーミンガムの孫息子のジェイムズ・ハニー氏と交信を続けている。氏によれば、バーミンガムのもうひとりの孫息子である故オウエン・ハニー氏は、さほど知られていないGossamer (1915)がバーミンガムの小説の内では最も優れていると見なしていたということだ。そこでこの作品を読んだところ、3人の主要登場人物のうちに、バーミンガムの北アイルランドに関する葛藤する見解が映し出されていることを感じた。同時にタイトルの"gossamer"は何かのメタファーとして用いられていると感じ、現在は、この2点を究明する論文に取り組んでいる。今年の8月にはイギリスに住むバーミンガムの孫娘であるスーザン・ハーパー氏の元を訪れ、情報提供を受けることになっている。4年間の科研による研究終了後には、バーミンガムに関する研究書を出版したいと考えている。 グレン・パタソンは知人であり、IASIL JAPANからの依頼を受けて、昨年10月の学会に彼を招いて講義と作品朗読をしてもらった。彼が"Love Poetry, RUC and Me"というエッセイを書いていたことを初めて知り、これは外国では出版されているが、アイルランド、イギリスでは出版されていないことを併せて知り、日本語訳の承諾を得た。12月には、日本アイルランド協会学会誌『エール』第22号に、Fat Lad (1992)とBlack Night at Big Thunder Mountain (1995)に関する論文を発表した。またパタソンは、今年の4月にはNumber 5という新作小説を出版する。ベルファーストの一軒の家に住んでいた5つの家族の物語で、彼らの目から見たこの都市の50年間の変化が語られる。今年の12月の日本アイルランド協会年次大会で、この作品に関する研究発表を行う予定である。
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