研究概要 |
平成16年度はジョージ・A・バーミンガムとグレン・パタソンの研究が主であった。4月にはパタソンが日本を舞台にした次作The Third Partyの取材調査のため来日し、彼の取材調査に協力した。同時にパタソンには別府大学短期大学部および大分県アイルランド研究協会で講義をしてもらった。 4月から7月にかけて、バーミンガムのThe Lost Tribes (1914)、Good Conduct (1920)、The Great Grandmother (1922)、Bindon Parva (1925)、Good Intentions (1945), Laura's Bishop (1949)を読んだ。多くの批評家はバーミンガムの初期の作品を最も重要視しているが、これら中期から後期にかけての作品も同様に重要な価値と意義を持つことを認識した。これらの作品は、多くの批評家たちが言うように単なる軽いユーモア小説ではなく、バーミンガムのキリスト教神学が見られる、人間世界の対立解決のための示唆的なヒントを与えてくれている。8月にはバーミンガムが1924年から1934年まで住んだイギリスのメルズと、1892年から1912年まで住んだアイルランドのウェストポートを訪れ、調査研究を行った。メルズでは幼少時代にバーミンガムを知っていたというオックスフォード卿に会い話を聞くことができた。ウェストポートでは、バーミンガムが牧師を務めていた5つの教会を案内してもらった。またこの町ではかつてGeorge A.Birmingham Short Story Competitionが行われており、その主催者に会って賞を獲得した作品を入手することができた。この文学賞は一時中断していたが、2005年から復活することになった。その後、ダブリンのトリニティ・カレッジの図書館でバーミンガムにまつわる書簡、新聞記事を収集した。中でも、The Seething Pot (1906)、Hyacinth (1906)出版後の騒動に関する記事を入手できたのは貴重であった。 平成16年度の研究の成果は、『別府大学短期大学部紀要』第24号(2005年2月)に、"Good Intentions Prevailing Over Antagonism : George A.Birmingham's Political Fiction and Humorous Fiction"と題して論文発表し、また平成17年3月12日に日本アイルランド協会歴史研究会定例会において「アイルランド史の中の小説家ジョージ・A・バーミンガム(1865-1950)」と題して口頭発表した。
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