研究概要 |
本年度は本科研の初牟度であり、まずはフランス20世紀の詩に関する書籍・文献を、とくにChar, Du Bouchet, Bonnefoy, Jaccottet, Jouveを中心に収集した。また、フランスよりDominique Villart招き、Dupinの詩空間をテーマとしてセミナーを開いて討論と意見交換の場をもった。こういった研究活動を通して、20世紀におげる"je"に統べられた言語世界の崩壊を予感しつつ詩人たちがいかに自らの言葉を詩言語の限界へと追い詰め、そこにいわばひとつのseuilとも呼ぶべき境界の場を創ろうと努力していたかを考察した。 フランク・ヴィランは、とりわけ上述の点についてChar, Du Bouchet,さらにCharと山村暮鳥のポエジーの対照分析(両者の詩世界のseuil性)をとおして考究し、有吉豊太郎はBonnefoyのポエティックが俳句と結び合う場の確定を試み、川那部保明はP.J.Jouveの詩において超越性に統べられてきた言語が無意識性へと降りてくる現場を考察した。 これらの考察は現在のところ個別に行われているが、次年度はその結果を、20世紀フランス詩のカタストロフをいかに超え出るかの方向を示すものとして総合的に捉え、その方向がどのように俳句や禅との出会いと響きあっているかに論を進めていくことになろう。
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