今年度は、現代フランス語において、過去の事態を表現する時の事態の認識の仕方とその表現の方策の関係の中から、特に絵画的半過去と呼ばれる用法を中心に半過去についての研究と、複合過去と単純過去との違いについての研究を進めた。 半過去については、元々は未完了な事態を述べるはずの半過去が時間軸上の特定の時点に起こったと思われる事態を述べているように見える絵画的半過去、中断の半過去を取り上げ、事態認識の方策としての観点からはこれらの半過去は完了的な事態を表しているのではなく、属性付与、属性記述を行っているという点を中心に研究を行った。この主張は既に春木(2000)において公にしたものであるが、今回はその主張をさらに深め、春木(2004)においてより詳しく展開した。 複合過去と単純過去に関しては、今回は複合過去を基調とする1人称小説を対象に分析を行い、二つの時制の交替現象を分析して、単純過去が物語の展開を背景的に述べ、複合過去はいわば主観的な前景部分を述べているという結論を得た。これについては2004年5月に刊行予定の論文でその成果の一端を公にする予定である。 また以上の研究と平行して、普遍的な観点から完了という操作を研究するために、中国語の完了のマーカーを研究している日本在住の台湾人研究者と議論を重ね、中国語の完了マーカー「了」のモダリティー機能についてのについての共同論文を発表した。
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