本研究の最終年度に当たる今年度は、これまでの研究のまとめとして、既に公刊した論文で行った考察を再検討して、半過去は事態認識の方策としての観点からは、一見完了的な事態を表わしているように論じられることもある絵画的半過去や断絶の半過去などの用法も含めて、完了的な事態を表しているのではなく、主語の指示対象に対する属性付与、あるいは属性記述を行っているという主張をより説得的なものにするように努めると同時に、立場が近いと思われる先行研究との異同についてもより明確にして、その成果を英国ウェールズ大学で2004年8月に開催された国際ロマンス語言語学・文献学学会の第24回大会においてフランス語で研究発表を行った。 また、複合過去と単純過去に関しては、複合過去を基調とする1人称小説を対象に行った分析で、単純過去が物語の展開を背景的に述べ、複合過去はいわば主観的な前景部分を述べているという結論を得て、これを論文の形で発表すると同時に、その成果を福岡、関西、東京で開かれた複数の研究会で発表して参加者からの批判や意見を聞いて、それらを参考に研究成果報告書に論文の拡大修正版を執筆した。 さらに、これまでのまとめと今後の研究の継続のための基盤として、事実認識に関する基本的な概念、つまり発話のタイプについて引き続き考察を行っている。
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