上記の課題を遂行するために、いくつかのタイプの現代フランス語で書かれた小説を分析対象として調査と記述を行い、発話時との関係から複合過去について考察し、その機能をまとめた。その後、複合過去と単純過去を対比しつつ、事態の主観的認識という観点から分析するために、二つの時制がどちらも多く使われている現代小説を資料として、両者の交替をかなり網羅的に照査し、得られた結果を文脈を考慮して考察し、複合過去が用いられる場合を意味的にいくつかのカテゴリーに分けて整理し、単純過去が物語の展開を背景的に述べ、一方、複合過去は主観的な前景化のために用いられていることを明らかにした。この分析により、複合過去と主観的な事態認識との関係をかなり明らかになり、今後の研究の基盤が整った。 半過去については、一見完了的な事態を表しているように論じられることもある絵画的半過去と断絶の半過去を中心に、半過去はすべて主語の指示対象に対する属性付与、あるいは属性記述を行っているという、従来からの筆者の主張をさらに説得的なものにするように努め、事態認識の方策としての半過去の機能を明らかにすることに努めた。 また、補足的な研究として、中国語におけるアスペクトマーカーである「了」について、特のそのモダリティー機能に関して、中国語のネイティヴスピーカーである劉綺紋氏と共同で論文を書き、対照的観点からの考察も行った。
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