研究課題
基盤研究(C)
研究課題であるフランス・ロマン主義文学におけるクルチザンヌ像の分析にあたり、まず、第一部ではアベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』をロマン主義的クルチザンヌの原点として位置づけ、娼婦的人物マノンがどのように描かれているかを探った。そこから、真実の愛によって賦罪の道に進む《courtisisane amoureuse》のテーマを引き出すことができた。次に、プレヴォーの小説から大きな影響を受けたアレクサンドル・デュマ・フィスの『椿姫』を取り上げ、マノンと「椿姫」ことマルグリット・ゴーチエを比較対照し、デュマの場合、ブルジョワ道徳に基づいた娼婦像となっていることを明らかにした。また、同時代に書かれたジョルジュ・サンドの『イジドラ』においても、「椿姫」と呼ばれるクルチザンヌが登場することを指摘し、女性の視点から描いた娼婦像が男性作家のものとどう違うかに焦点を当てて分析した。第二部では、バルザックの『人間喜劇』に登場するクルチザンヌ像を取り上げた。まず、『マラナの女たち』では、クルチザンヌのマラナ母娘の持つ「ファルス的な力」を明らかにし、男性原理を転覆しかねない危険な女性としてのクルチザンヌ像を浮き彫りにした。更に、『娼婦盛衰記』に登場するエステルに焦点をあてた。ここでは男の肉体や精神を腐敗させるばかりか、男の人格そのものを解体しうる力を持つクルチザンヌを、男性原理の象徴であるヴォートランがいかに「健全な」性に変えていくかを読み解いた。とりわけ、当時の規制主義者がパラン=デュシャトレの社会学的な理論に照らし合わせて考察した。『従妹ベット』では、肉体の獣性のみが協調されることの多い、従来のクルチザンヌ像とは違い、ロゴスの力を手にした「知的な」クルチザンヌ、ヴァレリーを取り上げた。彼女は、1840年代という「父」の不在の時代に台頭してきた女の力の脅威を体現していることを明らかにした。第三部では、とりわけ1840年以降に登場する「社会小説」の範疇に属する小説を取り上げた。まず、ウージェーヌ・シューの『パリの秘密』に登場する娼婦を、上記のパラン=デュシャトレやフレジエ、エスキロスなど社会学者たちの著作を考慮に入れながら考察した。次に、ヴィクトル・ユゴーの作品を取り上げ、初期の作品『マリオン・ド・ロルム』『アンジェロ』から、後期の『レ・ミゼラブル』のファンチーヌに至る娼婦像の変遷を、ユゴーの政治的言説なども参照しながら分析した。
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