研究概要 |
1.〔調査活動〕 前年度までの研究(農奴解放運動に影響を与えた「ズィギスムントの改革」に代表されるような「改革文書」に関する研究、およびドイツ文学史上最初のユートピア文学であるカスパール・シュティブリンの『エウダイモン国見聞記』に関する研究)に続いて、本年度はドイツ文学史上最も有名なユートピア文学であるJ.V.アンドレーエの『クリスティアノポリス』に関する研究を行った。著者のアンドレーエは日本では薔薇十字文書の起草者として知られているが、神学者及び文学者として研究の対象となることはまずなかった。『クリスティアノポリス』に関しては日本でも2,3の論考が存在するが、それらは建築学的および教育学的観点からなされた研究であり、文学的もしくは思想史的研究は成されてこなかった。しかし本作品は宗教改革および生活改革と密接な関わりを持っており、単にユートピア文学として鑑賞するのみならず、その歴史的背景や思想的特徴を考慮する知識社会学的な検討が必要である。よって本研究ではまず『クリスティアノポリス』が薔薇十字文書の延長であるという誤読を批判し、知識社会学的アプローチによって薔薇十字運動、宗教改革、敬虔主義、啓蒙主義思想との関連など様々な角度からこのドイツを代表するユートピア文学の研究を行った。結果的にアンドレーエはドイツで最初の生活改革者であるという説が裏付けられることになり、生活改革の伝統を確認することができた。 2.〔研究発表活動〕 上記の『クリスティアノポリス』に関して1編の論文発表を行っている.
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