平成15年度は14年度から引き続いて大阪大学21世紀COE研究プログラム「インターフェイスの人文学」のプロジェクト「言語班」のコアメンバーとして関与し、本研究とも関連するクリティカル・ディスコース・アナリシスの研究を進めた。ドイツをはじめとするヨーロッパのにおける社会言語学研究では、伝達能力という概念が、政治における言語の社会的役割、すなわち政治家の答弁およびマスメディアにおける記事、一般市民の政治的問題に対する意識などにも応用されている。そこで、平成15年度は、そのような研究を手がかりにして、当該COE研究プロジェクトのテーマである「言語と混交」の枠組みでも、本研究の対象でもある「国会での答弁」という言語行動とその言語能力に関して分析を行った。平成15年7月には再びアモン教授のもとで研究を進め、クリティカル・ディスコース・アナリシスの分野の草分け的存在であるジークフリート・イェーガー教授、テウン・ファン・ダイク教授、ルート・ヴォダック教授らと連絡をとり、その方法論や主要論文の翻訳などについて意見交換を行った。その研究成果は当該COE研究プログラム2002・2003年度報告書(全8巻)の中の第5巻に記されている。また、11月にはそのCOE研究プロジェクトの枠組みの中で大阪大学言語文化研究科において国際シンポジウムを開催し、アモン教授やサヴィーユ・トロイケ教授など伝達能力の世界的権威をお呼びした。さらに12月には多言語社会研究会の大会で「社会言語学の壁」という題目で、当該研究とも関連する問題について発表した。今年度は実際に国会での答弁を傍聴し、議事録などをデータとして分析して研究を進め、主要な論文の翻訳に従事した。中間報告は内容をふくらませ、他の研究者の研究論文とともにまとめて言語文化共同研究プロジェクト2003、その他で発表する予定である。
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