研究報告 課題研究の初年度に当たる本年度の研究成果は、主として以下の3点である。 1.パソコンを購入し、情報処理能力を高めると同時に、ホフマン文学・グリム童話・エンデ文学に関するCD-ROMによる資料を収集した。 2.「アジア・ゲルマニスト会議北京2002」に参加し、「グリム童話と日本の古典落語との比較」に関する研究を発表した。その後、新潟・秋田・岩手・北海道の大学でグリム童話に関する資料と情報を収集した。 3.「ホフマン文学におけるファンタジー」に関して2本の論文、「グリム童話」の解釈に関して3本の論文を発表した。加えて、国内外の学会において、3つの口頭発表を行なった。 本年度の研究における主要課題である「ホフマン文学・グリム童話・エンデ文学に関して、具体的作品を限定する」ことは、ほぼ達成された。つまり、ホフマン文学に関しては『砂男』『黄金の壼』『顧問官クレスペル』『ブランビラ王女』、グリム童話に関しては『死神の名付け親』『漁師とその女房』『太鼓たたき』『兄さんと妹』、エンデ文学に関しては『モモ』『はてしない物語』に、暫定的ながら限定した。その後、これらの作品の中のいくつかに関して論文・口頭発表すると同時に、「ファンタジーの概念規定」に取り組んだ。現在、「想像力とファンタジー」を区別するメルクマールを規定するという難問に直面し、この問題と取り組んでいるところである。ここにおいては、「想像力とファンタジー」を区別するメルクマールを規定すると共に、「明るいファンタジー」と「暗いファンタジー」を区別するメルクマールを見いださねばならない。次年度は、この難問を解決するとともに、エンデの『モモ』を取り上げ、この作品における「お金と時間」の問題に取り組み、「ファンタジーの概念規定」の完成を目指す予定である。
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