古代から現代までの図像と詩の関係については一応の成果を挙げた。 いよいよ懸案の19世紀フィグラティーフ研究に入った。 平成14年度に発表した「19世紀フィグラティーフ研究1」およびパノラマ研究につづいて、『魔笛』をめぐるシカネーダーとシンケルの舞台の作り方を、メガロマニーと光学的手法の面から追求した。シンケルのようなプロイセンお抱えの御用建築家が、パノラマのような大衆用見世物と後世に貶められるような表現に熟達していることの意味を、今回は取り上げた。 擬古典主義というものが、国民国家が立ち上がる時点で、きわめて有効なモデルとなりうる。そういう時代の要請としてシンケルという表象創造家が存在している。 パノラマが古代ギリシアの理想風景を再現しようとする欲望に支えられていた点を明らかにした。なおパノラマが「19世紀フィグラティーフ研究1」においてヴァルター・ベンヤミンのアウラ論に重要な展開をもたらすものとして、具体的にアウラを帯びた表象を調べてみたが、今回はその続編として世界がパノラマ・モデルでとらえられると考えた19世紀西欧の特質を追ってみた。 やがてこれらは、今後予定される「ベルリン・博物館島」の出来方を論じるための序説である。
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