本研究計画は、1998年度より2001年度までの4年間、「冷戦構造解体後のドイツの文化と社会-1990年代ドイツ文学をめぐって」の題目で科学研究費補助金を得て行なわれた研究を継承・発展させるものであり、第一に、ドイツ語圏における同時代文学の趨勢を追うこと、そして第二に、そうした同時代文学の検討を通して、いわゆる「戦後文学」を20世紀文学という枠のなかで位置づけ直す理論的作業を行なう、という二点に集約される。 新たに開始された本研究の初年度にあたる平成14年度にあっては、1)資料の収集・整理を行なう実務的な作業と、2)実質上の研究内実として、作品・資料を読み込み、そしてそれを理論的に検討・考察してゆく、という二つの柱が中心になった。 1)資料の収集・整理を進めた。 第一に、新聞・雑誌、及びインターネットのウェブサイトといった媒体から、政治文化の変動を如実に表わすような議論・発言、新しい文学作品をめぐる記事などを、あらかじめ定められた検索語を手がかりに拾い出し集めた。なかでもとりわけ、作家マルティン・ヴァルザーの新作をめぐる「反ユダヤ主義」との批判をめぐる議論について集中的に集めることができた。 第二に、収集された資料を、主題、キーワード、等を軸として整理する作業については、データベースをどのように構築するべきかの模索が続けられた。 2)ドイツ現代文学ゼミナール、及び東京都立大学を会場に、近隣在住研究者、オーバードクター、大学院生らによって構成されている、ドイツ現代文学を扱った月例研究会において対論、意見交換を重ねた。研究会で扱われ議論された作家・作品は以下のものになる。 ・Thomas Brussig : Am kurzeren Ende der Sonnenallee ・Norman Ohler : mitte ・Katja Henkel : La Vons Lied ・Maritin Walser : Der Lebenslauf der Liebe ・Gunther Grass : Im Krebsgangwomegutte ・Arno Schmidt : Seelandschaft mit Pocahontas ・Libse Monikova : Verklarte Nacht ・Markus Orths : Corpus ・Martin Walser : Tod eines Kritikers ・Benjamin Lebert : Crazy
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