6月初旬および9月上旬の現地調査によって、かなりの成果が上がった。 1)ブルノのJiraskova29番地のムージル旧居を再調査し、2階の全室をcm単位で計測した。庭(小説『特性のない男』の第二巻の庭のモデルと思われる)の原状について、3階の子供部屋についてなどは、1920年〜38年に居住していたBrunner家の子孫、Thomas Brunner夫妻と会見、貴重な証言と、のちに1938年撮影の8mmフィルムの複製を入手した。また所有関係については、ブルノ市文書館のKalvodva女史、M.Flavodva女史の協力を得て、かなり解明することができた。 2)現地の研究家ドゥルリーク氏が発見した、ムージル17歳、18歳のときに新聞に投稿した作品について、氏より直接聞き、ウィーンの国立図書館にて当時の新聞を入手、メーリング・リストにてこの発見を世界のムージル研究家に伝えた。6月5日のオーストリア文学会総会にて発表。7月にザールブリュッケン(ドイツ)にて開かれた国際ムージル学会理事会にて、ほぼ本物と認定された。 3)ヤセルスカ10番地のムージル旧居については、10号室に内部立ち入り調査をした。しかしその後、市文書館の調査によりムージル家は9号室に居住していたことが判明。来年度の調査の準備を進めている。1900年当時のDeutsches Haus(現在は存在しない)、Schwedenschanzeなどについても、かなり調査が進んだ。 4)ボルツァーノのDi Angeli家を6月に訪問したが、当主がちょうど山荘に移動するところだったため、山荘に同行して話を聞くに留まった。Villa Isidoraについては、ボルツァーノ市の資料館にてかなり調べることができた(建設年度、建設者名、設計者名、申請書など)。来年度あらためて平面図の計測、ロンコロ城の所有者(旅行中だった)との面談を計画している。
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