1.ワイマールのアンナ・アマーリア図書館において、ゲーテ崇拝の系譜に関する以下の調査を遂行した。 1)18世紀後半期におけるギリシャ学の興隆の特質と、ギリシャ精神の具現をゲーテに見る同時代の傾向。文献学者ハイネによるヴィンケルマン賞賛の文書、F.シュレーゲルのギリシャ学構想に関する貴重な資料を収集した。 2)19世紀後半期におけるゲーテ学の形成に関する資料を収集した。ヘルマン・グリム関連の文書調査の過程で、当時のゲーテ学形成を批判する資料なども発見し、立体的な再構成が可能となった。 3)ドイツの高等学校においてゲーテがどのように読まれるべく指導されたのかについて、当時の教員によって書かれた貴重な資料を収集した。 4)世紀転換期から特に強まっていく極端なゲーテ崇拝の傾向を代表する資料を収集し、同時にこのような時代思潮にたいする批判的言説についても、当時の雑誌などから抽出した。 5)1932年のゲーテ没後150周年記念行事に関する多くの資料を収集した。 2.ワイマールのゲーテ・シラー古文書館において、次のテーマに関するゲーテの手稿資料を調査した。 1)ゲーテの民衆読本構想に関して調査を進めていく過程で、この構想に関する資料発見が1889年のゲーテ生誕140周年行事と関係している点が明らかとなった。つまり民衆読本構想は、ゲーテをドイツ国民作家として位置づける試みが文化政策として遂行される過程との関係のなかで読まれたのである。 2)ゲーテの『プロゼルピーナ』の手稿資料を調査していくなかで、ゲーテの手稿資料のなかにゲーテ自身によらずに、口述や秘書に書かせた資料が多く含まれている点が鮮明になった。ゲーテ工房とも言うべきテキスト生成の創作現場が存在していたことを、これらの資料は語っている。
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