今年度は、昨年3月にWeimarのAnna Amalia-Bibliothekで行った資料調査をもとに、「ギリシャ人と表象されるゲーテ」というテーマをめぐって、多面的な視点から研究を遂行した。その成果は、学習院大学ドイツ文学会『研究叢書』第8号に掲載した論文「ギリシャ人として表象されるゲーテ-シュレーゲルとハイネにおけるゲーテ崇拝のディスクルス」に凝縮されている。以下のような内容構成になっており、これまで考察されてこなかった現象をゲーテ崇拝を軸に分析した- 1.胸像となるギリシャ 1)理想の身体=古代ギリシャの彫像 2)不在の身体の代理機能=記念碑(胸像・メダリエetc.) 2.古代ギリシャ風に生きる-フリードリヒ・シュレーゲル 3.規範性と歴史性-ゲーテとギリシャ 4.ハイネにおけるゲーテ崇拝のディスクルス 1)「原-著者」ゲーテにたいする「嫉妬」-ロマン派的心性の共有 2)ゲーテの作品の「不妊性」-芸術による共生の不可能性 さらに、ゲーテの演劇論、とくに舞台言語をめぐるゲーテの言説が、日本の演劇言語の近代化(特に鴎外)に与えた影響について、論文"Diskurse zwischen Buhnen- und Nationalsprache. Ogai Moris Dramen-Ubersetzungen zu Beginn der japanischen Moderne"のなかで詳細に論じた。 2003年12月8日にアーヘン工科大学文学部において、"Die Schrift als universeller Mnemo-Kosmos"と題して講演し、その中でゲーテの文字論に言及した。 2004年3月にWeimarのAnna Amalia-Bibliothekにおいて、ニーチェにおけるゲーテ崇拝現象を分析するための徹底した資料調査を遂行し、その成果は2004年度中に発表される。
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