今年度は、西フリジア語文法記述の中で最終的に残った動詞の部分にかんする考察を進め、裏面の雑誌論文としてまとめた。扱ったのは派生動詞、現在分詞、過去分詞、不定詞である。派生動詞については、「接尾辞」による派生動詞と「品詞転換」による派生動詞を区別し、後者を「ゼロ品詞転換」と「加音つき品詞転換」に分類して、さらに「加音-ig」とは別の「gje-動詞」を峻別することによって、従来の西フリジア語の動詞派生方法の混乱を明晰に分析した。また、不定詞については、「第1不定詞(e-不定詞)」「第2不定詞(en-不定詞)」「第3不定詞(命令形不定詞)」について従来の文法書の扱いを大きく上回る詳細な記述を施し、とくに「te-第2不定詞」を「第2不定詞」から独立させて別個に論じ、その使用に4つの類型を設定するなど、現代言語学の方法論を積極的に採用してモダンな分析を心掛けた。 資料収集はドイツ、オランダ、北欧の最新の学術書やデータベースを中心に行い、電子メールを活用しながら、現地の研究者との交流に心掛けた。とくに、西フリジア語とオランダ語のバイリンガルであり、オランダ・フローニンゲン大学言語学科音声学元教授のデ・フラーフ博士を学術振興会を通じて北海道大学に招聘し、オランダ語とフリジア語の例文について母語話者としての立場から貴重な調査結果と助言を得ることができた。このような事情に恵まれ、資料収集に予想以上の金額を費やしたために、予定していた海外旅費の使用は控えた。
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