本研究は、現在近隣の優勢な言語(ドイツ語・イタリア語およびそれらのスイス地域の諸方言)との言語接触下で消滅の機器に瀕しており緊急な調査を必要とするスイス・グラウビュンデン州ロマンシュ語を研究対象とし、ロマンス語的な語形成法とゲルマン語的な造語法とが衝突する構造的な干渉現象の分析解明を主な目的としている。 平成14年度には現地の最新のロマンシュ語言語資料を収集するとともに、外国旅費により現地に赴き、スイス・グラウビュンデン州にある財団「ロマンシュ語連盟」の相互研究協力の下で、新しい語彙(neologisms)および表現の創造・生成の観察を行うとともに、新語受容についての聞き取り調査を行った。 平成15年度は、ロマンシュ語話者における新語受容の言語意識を調査し新語形成のメカニズムを解明するために、印刷媒体などの従来のメディアを活用するのみならず、Web上で発信されているロマンシュ語サイトから新語を採集し、基礎コーパスを作成に着手した。デジタル化した言語データをから新語生成のプロセスと受容および伝播の実際を考察することことが可能になった。当該年度は特に、言語外的な要素も考察しつつ、ロマンシュ語における新語受容類型の地域的バリエーションを調査した。この空間的把握のために、すでに平成10年度までの「人文科学とコンピュータ」の公募研究および基盤研究において開発したマルチメディア型言語地図作成のための基本的処理方法を活用し、この新語形成プロセスの研究に適用した。現在はこのデータベースをCD-ROMおよびWeb上で公開の段階になっている。
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