アフリカ人作家によるアフリカ文学は、国家による検閲を受け、作品の発禁処分や作家の亡命、投獄、あるいは虐殺の試練をくぐり抜けてきた。いま、南アフリカのアフリカ文学はこうした試練から解放されつつあるが、言語政策の実施と教育制度の改革と歩調をあわせて、新たな発展の場を模索している。アフリカでは、教科書は出版活動の大半部分をしめているために、南アフリカでも今後、新たな教科書作りのために、政府と出版社と教育者と作家が協力体制をとることになる。 2003年は、とりわけ、南アフリカの作家J.M.クッツェーがノーベル文学賞を受賞した。これは南アフリカでは二度目の経験であった。それだけ、南アフリカ文学は世界的なレベルにも達し、世界的にも注目される問題を提起してきたことになる。こうした出来事に関連して、本年度はクッツェーの文学を再評価と検討を加える研究を行なった。これは、南アフリカ文学、あるいはアフリカ文学の位置を分析するために必要な作業であった。 文学が現代社会に与える影響と、文学が持つ意味合いを考える機会になったともいえる。さらに、現在世界で進行中の「グローバリゼーション」がアフリカ社会に与える影響についても考えた。アフリカ開発のための新しいパートナーシップ(NEPAD)」が、グローバリゼーション参入のプログラムとして、アフリカ社会で急速に展開をみせているが、このプログラムが実際にアフリカ女性にとって、あるいはアフリカ社会と開発にとって、どのような意味があるのかを考察することができた。
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