研究概要 |
科研が採択されたのが平成14年度の10月で、年度末まで半年しかなかった。まず朝鮮語の非流暢性サンプルの収集からはじめ、韓国で予備調査と本格的な吃音者の非流暢性サンプル収集を行なった。平成15年度は中国語の非流暢性サンプル収集の予定であったが、SARSの流行でその調査収集は行なえなくなった。この年度は、収集した朝鮮語母語吃音者の非流暢性サンプルの書き起こし、データベースへの登録、衛星中継のTV番組から得た非吃音者の非流暢性サンプルの書き起こしを厳密に行なった。そして英語の非流暢性サンプルの整備も進んだので、日本語、英語、朝鮮語の部分的な対照分析を進めた。完成した形ではないので、学会発表や投稿は控え、公開講座や研修会等で意見を聞き、成果を公表していった。平成16年度から中国語をインドネシア語に変更し、非吃音者の非流暢性サンプルとその背景をインドネシアで録音されたTV番組8時間分から書き起こした。しかし吃音者の非流暢性サンプルの収集手配がつかず、時間切れとなった。したがって、分析を行なえたのは朝鮮語の非流暢性のみである。そして総括的な研究は、日本語母語、英語母語、朝鮮語母語の吃音者と非吃音者の語句内に繰り返し部分をもつ非流暢性の対照研究となった。非流暢性とその背景のサンプル総数約19,000例である。 大部分の非流暢性は語頭で発生する。そして非流暢性の分節は、個別言語の音節の構成素の単位をそれぞれの個別言語で多く反映しているが、共通してCV単位も多い。また吃音者と非吃音者では非流暢性の分節の蓋然性が異なり、吃音者が共通して頭子音の分節が非吃音者より多い。つぎに非流暢性の生起環境が吃音者と非吃音者とでは異なっている。吃音者は閉鎖音が非流暢性の引き金だが、非吃音者は鼻音が引き金となっている。これは日本語、英語、朝鮮語に共通していて、吃音者と非吃音者は同じ形態の非流暢性において、その発生過程が異なっていることを示唆している。
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