今年度は、バスク語ゴイスエタ方言、オイヤルツン方言、アスペイティア方言、オンダリビア方言について記述言語学的調査を行った。 今回が初めての調査となるゴイスエタ方言、オイヤルツン方言については、基礎的動詞の語彙調査、助動詞直説法現在形と過去形の活用の調査、「動詞の単純形」の形態と意味・用法に関する調査を行った。 アスペイティア方言については以前からの継続調査であるが、「能力や可能性を現す表現」について、現在まで調査者が蓄積してきたデータをさらに補強するための調査を行った。 オンダリビア方言についても以前からの継続調査であるが、「動詞の単純形」について現在まで調査者が蓄積してきたデータをさらに補強するための調査を行った。 結論としては、ゴイスエタ方言、オイヤルツン方言では、(1)助動詞の「聞き手が親しい女性か男性かによる活用変化」に関して、「聞き手が親しい女性である場合の活用」は、世代にもよるが、ほとんど使われなくなってきていること、(2)「動詞の単純形」については単純形を有する動詞の数が5〜6にすぎなくなっていることがわかった。アスペイティア方言では、助動詞の「聞き手が親しい女性か男性かによる活用変化」は非常によく体系だった形で保存されており、「動詞の単純形」もこれを有する動詞は11存在する。また、「動詞の単純形」の意味・用法もゴイスエタ方言、オイヤルツン方言ではアスペイティア方言に比べ狭くなっており、「動作の進行中であること」を表すに留まると言えるようだ。オンダリビア方言の「動詞の単純形」もほぼゴイスエタ方言、オイヤルツン方言と同様の状況にあると言える。 アスペイティア方言の「能力や可能性を現す表現」については一部すでに1995年に発表済みであるが、それを補うデータを収集することができた。
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