本研究の目的は、朝鮮語史、日本語史研究の資料として重要な位置を占める日本資料および朝鮮資料を「日本・朝鮮資料」として総合的に調査研究することにある。具体的には1)諸機関所蔵の資料を調査し、資料の位置付けを行う、2)主要資料の基礎的研究としてテキストの電子化、注釈、索引作成などを行うことを企図している。14年度は、韓国と日本数ヶ所で資料調査と複写等を行い、資料論的な位置付け等を行った。以下に主要な調査と成果を記す。 韓国ソウル大学校奎章閣では、『捷解新語』原刊本2種、改修本2種、文釈本1種、『隣語大方』の調査と確認作業を行った。改修本のうちの1本である一簑文庫本は、今まで実態が紹介されていなかったものである。同書は、巻7-9の零本であり、乱張、落張があり、断片の散在が著しい。今回、整理しなおし、原形の復元作業を行った。また、この一簑文庫本は、他の改修本(旧奎章閣本、東洋文庫本、濯足文庫本等)との比較により、東洋文庫本よりも古い印刷ではないかと推定できた。韓国国立中央図書館での調査では、『倭語類解』の書誌事項の訂正ができたほか、同館に『捷解新語』文釈本の筆写本(完本)が存在することが分かった。所蔵の経緯などは今後の課題としたい。韓国高麗大学校では、晩松文庫所蔵『捷解新語』原本を確認したほか、同博物館で「捷解新語』重刊本、文釈本、「倭語類解』の版木を参観、調査できた。 日本の駒澤大学濯足文庫では、『捷解新語』重刊本、『倭語類解』、『隣語大方』の原本調査をした。現在『捷解新語』重刊本諸本の前後関係の推定を行いつつある。また、『隣語大方』の調査では、複製本に欠けている部分があることが確認できた。 なお、主要資料の電子テキスト化は、主に『捷解新語』改修、重刊本を中心に現在進行している。同時に、対馬宗家文庫所蔵の資料を複写したネガフィルムをデジタル化し、データベース化する作業等も開始している。
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