本研究の目的は、(1)資料の調査・収集を行うとともとに資料の位置付けを行うこと、(2)「日本・朝鮮資料」について基礎的な言語史研究を行うことにあったが、3ヵ年の研究によって次のような研究成果を得た。 1)韓国および日本の諸機関が所蔵する当該資料を調査し、未知の資料の発見と紹介(一蓑文庫本重刊改修捷解新語、筆写本捷解新語文釈等)、捷解新語重刊本諸本その他の収集を行った。その調査結果を学会誌に報告した。資料の一部をデジタル化し、研究のための便宜を図った。 2)未整理の一蓑文庫本重刊改修捷解新語について調査し、その張付けを正し、断片を整理して、原形の復元を行った。 3)重刊改修捷解新語の諸本4種を対象に、印刷の前後関係を考察した。とくに、板木の状態(磨滅・埋め木)を詳細に調査した結果、奎章閣本→濯足文庫本/一蓑文庫本→東洋文庫本の順序であることが分かった。 4)『朝鮮王朝実録』に記録された漢字表記の日本語語彙(15世紀前半部分)を調査し、解読の方法を確定したうえで、その分析と言語史的意義(音韻史の資料としての価値)を明らかにした。結果を韓国での国際学会と学会誌に発表した。 5)15世紀前半成立『老松堂日本行録』に記録された日本語語彙を言語史の観点から初めて研究し、その音韻史の資料としての価値および従来の解釈への問題点を指摘し、学会誌に報告した。 6)以上の考察をとおして、日本・朝鮮資料研究においては、朝鮮語学と日本語学の総合的、相補的な協力が必要であることを示すことができた。
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