研究課題
昨年度まで行って来た言語現象の実証研究中心の準備研究段階から、普遍文法理論と数学・計算機科学で演算量・演算複雑性の基準となるオートマトンとの対応関係についての直接的研究に重点を移行した。また、生成文法での位相理論についても経済性原理の観点から理論研究を行った。言語現象として、日本語における構成素疑問詞疑問についての実証研究を行った。これは、これまで一般に音韻形式には現れない潜伏的移動と考えられて来た。一般に移動操作は顕在的であれ潜伏的であれ融合操作より不経済であり、また顕在的移動は潜伏的移動より不経済であると考えられており、潜伏的移動の存否は普遍文法理論での演算量・演算複雑性を定式化する上で問題となる。日本語は、「疑問詞島」効果以外、下接条件違反効果は示さず、また、「掻き混ぜ」移動は顕在的で、「疑問詞島」効果以外、全ての下接条件違反効果を示す事から、日本語には疑問詞移動は潜伏的にも存在せず、「疑問詞島」効果は論理形式での選択関数変項の無差別束縛により表出する事を示し、この分析は中国語疑問文、英語での複数構成素疑問詞疑問でも有効である事を示した。この成果は、第2回理論東アジア言語学ワークショップ(台湾新竹市清華大学)で報告発表した。位相理論においては、語彙部分配列で位相を決定する説が有力であるが、これは派生前に指数的演算を要し、動機となる超上昇構文では融合操作より移動操作を優先するだけで過剰生成が回避できる事が分かった。この成果は、現在ある学会発表に投稿中である。また、昨年度第6回モロッコ言語学会(モロッコ王国ラッバト市モハメッド5世大学)で口頭発表したブレトン語不定詞文頭構文での主要部の指定部代入移動分析について、この度プロスィーディングス論文として刊行される事になり、修正を加えて脱稿した。
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Proceedings of the the Sixiemes Journees Nationales de Linguitique de Maroc : Bare Structures and Functional Projections (掲載予定)