今回の研究の目的は、先行研究で観測されたリズムパターンの生成に影響を与えている音声特性が、音声学・音声言語科学の理論に基づく発音訓練によってどのように習得されるのか、習得の順序、速度、完成度を観測し、英語教育への応用を図ることであった。従来のオーラルコミュニケーションの授業のみを受講するグループと英語発音訓練を実施するグループを用意し、リズムパターンの習得を比較・観測した。この指導法による学習効果の観測が研究目的の一つである。第二の研究目的は、弱形の生成とストレスを担う内容語の生成について習得の順序、速度、完成度の比較と、学習効果の観点からの指導法の検討であった。母語話者の生成データは、その両方の要素が生成パターンを形成していることを示しているが、英語学習者の観点からするとこれら2つの要素に習得上の差違があることが先行研究のデータから示唆されていた。 短期間であっても、発音訓練の授業を受講した学習者の内容語と機能語における持続時間制御には訓練の著しい効果が観測され、通常の英語の授業のみを受講した学習者にはない上達が測定された。また、6年間の中学・高校における英語教育の成果を示す第1回録画時のデータより、持続時間制御においては、機能語の持続時間制御よりも内容語の持続時間制御の方が先に米語母語話者のパターンに近づく傾向にあることが観測された。機能語の習得は困難であり、通常の英語授業によっては短期間で持続時間制御に変化は観測されないが、発音訓練はこの習得を進めるうえで有効であり、短期間の訓練の結果、顕著な上達が観察された。リズムパターン習得におけるストレスを担わない機能語、つまり弱形の持続時間制御の重要性が示された。
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