研究概要 |
学習者の第1言語(L1)である日本語の母音カテゴリーが、第2言語(L2)である英語の母音の識別にどのように関わっているかを様々な子音環境において調査し、分析した。子音環境は、先行子音の調音点と有声性、後続母音の有声性と調音方法によって分類し、日本国内で英語を学習している日本語話者とアメリカ在住の日本語話者のデータを比較検討した。フロリダ大学内で録音した英語の一音節語(/CVC/)を加工して音声刺激として用いた。 先行子音は/P, b, t, d, kg/、後続の子音は/t, d, n/とし、後続母音の調音点の違いによる影響は今回の実験結果を詳細に分析した後、行うこととした。今回は/i, I, ε, ae, a/を/pVt/,/bVd/,/tVt/,/dVd/,/kVt/,/gVd/,/pVn/,/bVn/,/tVn/,/dVn/,/kVn/,/gVn/の構造に入れたものを音声刺激とした。前後(特に後続)の子音の有声性は、母音の長さに影響を与え、一般に無声子音の前では母音は短くなる傾向がある。これらの母音の中で特に/i/と/I/の対立については、日本語話者が、スペクトル上の違いを知覚できず、長さを主な手がかりにして識別していれば、無声子音が有声子音環境かによって識別難易度が変わることが予想された。また、先行子音の調音点の違いや後続の子音が鼻音か否かによる、スペクトル上の違いが、英語の母音の識別難易度に与えるかに興味が持たれた。 実験の結果、有声子音と無声子音環境の比較では、/i/-/I/にだけその影響が顕著に見られて、実験前の仮説を指示する結果となった。また、調音点の違いによる影響については、/ae/-/a/だけが軟口蓋閉鎖音の後で著しく識別率が高くなった。また、後続の鼻音による影響も観察され、/t, d/の前よりも著しく識別率が低い母音対立もあった。
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