研究課題
本年度は日本語および米語において音声によって感情がいかに伝達されるかについて、以下に述べる実験を実施した。(1)一定の文を種々の感情ないし発話スタイルで発話した音声(以下、感情音声)の音響特徴ないし調音運動を分析したところ、リズムパタンとピッチ曲線の双方がともに変動していることがわかった。また、ストレス・パタン(音節および音節境界の強さで表現される)は、しばしばイントネーションとは独立に感情音声に寄与していることがわかった。例えば「疑い」の発話においては、もっともプロミネンスの大きい音節においてピッチは最も低い値をとっている。これらの結果については、2004年9月(沖縄)に報告をおこなった。(2)さまざまな感情をこめて発話された音節「エ」を、日・韓・米の被験者に聴取させ、その聴覚上の印象に従って、刺激音を分類して命名させる実験を実施した。主成分分析の結果は、被験者の母語によらず、同様の意味グループが抽出されることを示していた。この結果は日本音声学会の学会誌『音声研究』に投稿し、受理掲載された。(3)米語および日本語話者による自発的感情音声生成時の調音運動データをNTT基礎研究所(厚木)の強力によって収録した。話者が自分の人生の思い出(悲しい思い出など)を知人と、自由に対話しているデータである。比較対照のために、同じ発話を感情を込めて模倣した発話と朗読した発話のデータも収録した。日本語においても米語においても、自発的感情音声と模倣音声の大きな相違点は、主として下顎と唇の運動に存していた。また自発音声と朗読音声との間にも同様の相違が認められた。さらに米語話者の場合は、舌の運動においても自発音声とそれ以外の音声との間に相違が認められた。この実験によって、感情が(韻律特徴のみでなく)調音運動にも影響を及ぼしていることが確認された。この実験については、2004年9月(沖縄)、2004年9月(東京)、2004年10月(韓国)に報告をおこなった。
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Gifu City Woman' College Bulletin 54(印刷中)
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