研究概要 |
本年度は,特に1)『聖杯の探索』Demanda do Santo Graalと2)『ヴェスパシアヌスの物語』Historia de Vespasianoについて集中的な研究が行われた.特に1)については,近年フランスで完結したFanni Bogdanowの『聖杯の探索』のエディションに従えば古仏語と中世ポルトガル語がほぼ一対で対応し,言語特徴を体系的に比較出来る箇所がかなりあることがわかり,OCRで電子化して双方のテキストの対照表を作成するなど比較,分析の方法が検討された.2)については中世ポルトガル語テキストの電子化が完了しているので,このデータベースを用い言語特徴の分析が行われた.なお,黒澤は別予算枠で平成15年12月31日から15日間ポルトガルのリスボンへの出張を行ったが,その際,本研究に関連する調査も行った.直接の目的はリスボン国立図書館において1496年にリスボンで出版された『ローマ皇帝ヴェスパシアヌスの物語』に関して、ファクシミリエディションにおいては印刷不鮮明であった箇所について確認することであったが,同時に,このテキストの翻訳の際の元となっていると思われているスペイン語版のテキストのコピーの入手や,同時期に同じ出版人の手になる16世紀初めの「マルコ・パウロの書」と呼ばれる『東方見聞録」のラテン語訳を介したポルトガル語訳の資料なども収集し,新たな研究素材を得るなど,今後研究を発展させる上での貴重な情報を得ている.以上,4年間の研究期間の2年目である,本年度の実施計画は十分に遂行されたと考える.
|