研究概要 |
1)Cepada(1995)の研究を出発点に予備調査を行った結果,『聖杯の探索』Demanda do Santo Graalや『ジュリアス・シーザーの行跡』A vida e feitos de Julio Cesar,『アリマタヤの書』Livro de Josep Abaramatia,『ヴェスパシアヌスの物語』Historia de Vespasianoなどの文献が研究対象として適切であることが明らかにされた. 2)平成15年末に行なったポルトガルのリスボン国立図書館における調査で1496年にリスボンで出版された『ローマ皇帝ヴェスパシアヌスの物語』に関し、ファクシミリエディションでは印刷不鮮明であった箇所を確認するとともに,スペイン語版のテキストの入手や,同時期に同じ出版人の手になる16世紀初めの「マルコ・パウロの書」と呼ばれる『東方見聞録」のラテン語訳を介したポルトガル語訳の資料なども収集した. 3)『聖杯の探索』Demanda do Santo Graalについては,Bogdanowのエディションの古仏語オリジナルが存在する部分と中世ポルトガル語テキストの対照表を作成し,体系的な比較が可能になるよう,単位を組み変えるなどし,言語特徴を分析、考察した。 4)『ヴェスパシアヌスの物語』Historia de Vespasianoについては、言語特徴を分析し,スペイン語版オリジナルに近いテキストとの対照を試みた.体系的な比較には至っていないが、言語特徴の年代的性格を明らかにするため,特徴の時代的分布、広がり等についての研究を開始した.特に完了形など時制関係の分析では、近年一部の研究者が指摘しているように、従来考えられていたより、翻訳の時期が遅く、15世紀後半にテキストの特徴を同定できるものとの感触を得ている。
|