1レオン・ド・ロニー、ジュヂット・ゴーチエ、ポール=ルイ・クーシュー、ミシェル・ルヴォン・ボノーなどの、フランスにおける日本古典詩歌紹介にかかわった主要な人物の著作、記事などを収集し導入期にフランスに紹介された和歌・俳句をカード化して調査中である。芭蕉を初めとする同一句・また万葉集・古今集中の同一歌、それらに対する解釈の類似が多く存在するだろう結果が予想される。 2ゴンクール、ビング、シェノー、林忠正に関する多数の貴重な日本美術関連論文の収集を行った。とくに、ジャポニスムの源となったシェノーの著作『芸術において競う諸国民』(1868)の中の「日本美術」はとくに重要であり、フランス国立図書館より取り寄せ、現在調査中であるが、子規の「写生論」との相関が期待される。 3なお研究実施計画に記したが、今年度はフランスに日本詩歌を導入・発展させたジュリアン・ヴォカンスの調査研究を先行させた。近年フランスにて出版され、日本ではほとんど知られていないヴォカンス関連の著作3冊を発見、著者との連絡が取れたためである。それらを土台に、リヨン市立図書館、リヨン市古文書館、パリINALCO、パリ国立図書館、ギメ美術館そのほかで、資料収集、関係者との面談・協力者の作品解釈理解などにより、ヴォカンスについての未知の知見・情報[出自、戸籍、経歴、日本詩歌(俳句)への関心の由来・出会いの経過、作品発表誌、当時の文壇との関係、日本古典詩歌に発見した価値、3行詩ハイカイの詩法、ヴォカンス周辺の日本詩をコアとする日仏ネットワーク]を得た。また日本でヴォカンスの人と作品についての情報が断片的であったのは、徹底したフランス文学素養の上に日本詩歌を摂取した彼の作品が簡素だが極めて奥深く難解なため、フランス人の協力なしには取り組み困難であっため未開拓であったとの知見も得た。
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