本研究は、日本のシェイクスピア受容と世界のシェイクスピア受容をつなぐヒントとを求めて、地理的/文化的にも日本と他のアジアの国々との間のある沖縄の演劇の歴史と現状を下記の4つの観点から調査/分析し、国際交流の場としての沖縄の可能性に焦点をあてることを目的にしていた。 1)アジア地域のシェイクスピア受容と変容の歴史 2)組踊から沖縄芝居までのシェイクスピアの受容と変容と大和劇などの影響 3)戦後の沖縄芝居の近代化とシェイクスピア 4)現代の「沖縄」演劇におけるシェイクスピア劇受容と他のアジア地域におけるシェイクスピア劇受容 SARSの影響などによる計画の変更もあり、すべての目的を達することはできなかったが、大和と沖縄での調査のほか、シンガポールでの国際学会、インド・ジャイプールでの国際演劇学会及びニュー・デリーでのインド・シェイクスピア学会でそれぞれ研究発表と討論に加わり、また、タイでも取材することもできた。しかし、インドのラスタム・バルーチャも指摘するように、それぞれの国の言語や歴史を理解しないまま、西欧発の「アジアとシェイクスピア」というテーマを追うと、西欧が東洋にいだくオリエンタリズムを、西欧化されたアジア人がアジアの伝統演劇にあてはめ、新たな文化搾取を生む危険性をはらんでいる。この点に注意しながら、大和と沖縄との関係や、沖縄や大和の地域演劇を鍵に、インド、タイ、シンガポール例などを対比させながら深めていきたい。 尚、今回の報告書において、沖縄の近代化とシェイクスピアとの関係については、人類館事件及び沖縄と大和の「オセロ」の受容と上演を中心にまとめた。
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