研究課題
基盤研究(C)
浄土真宗とアフリカ系アメリカ人のキリスト教は、多くの点でたいへん異なる宗教的発展をみせているが、どちらも主流文化から隔たった文化圏から移入された宗教と関連し、キリスト教社会で存続していくために、意識的無意識的な変容を迫られてきた。アメリカに複数ある仏教宗派のうち浄土真宗(西本願寺)では、初期移民に西本願寺系の信者が極めて多かったことに関連して最も早くアメリカへ開教師を送り、現在最も大きな教会組織をもつとともに、北米において独自の展開をしている。浄土真宗歌の伝統とキリスト教讃美歌との融合の結果、アメリカで讃仏歌を創造し伝承してきた。讃仏歌の発展史にはキリスト教文化に対する受容的排他的な両方向の反応をみることができる。排日運動や第二次世界大戦の影響を受けながらも、北米の讃仏歌は日系人のアイデンティティのひとつのよりどころとして存続してきている。ハワイでは、民間宗教歌も発生した。黒人霊歌は、宗教的にも言語的にも多様な出身のアフリカ人の子孫が奴隷制度に苦しみつつ、アフリカの宗教や音楽の影響の下で創造した民間キリスト教歌である。それらは、死後の世界(天国)にのみ希望を見出す圧倒的被抑圧者の歌である。「黒人霊歌」というジャンルの成立までには、政治的、社会的、かつ経済的な影響が大きく働いている。すなわち、黒人霊歌は黒人の高額収入源として注目され、黒人に対する劣等で危険なイメージを払拭する装置として働き、政治家らはこれを「犠牲者の声」として利用してきた。その結果、「犠牲者の声」としての黒人霊歌とは別に、現代の黒人の気持ちに訴える新たな宗教音楽としてゴスペルソングの発生をみることになる。興味深いのは、少数民族の宗教歌がアメリカ社会の動向に関与して発生したり変化したりするため、仏教歌と黒人宗教歌がほぼ同時期に大きな変化を見せていることである。我々は、少数民族が主流社会に抱く恐怖と生き残りの模索や、恐怖に対峙する形で固められていく彼らのアイデンティティを、これら宗教歌の発生と変容にうかがい知るのである。
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