本年度は、先年度に行った作業の上に立って、アメリカにおける地方自治体における土地利用のコントロールが、どのような法制度、経済的原理、政治的メカニズムを背景にして展開されているかについての理解を深める作業を進めた。さらに、土地利用についての決定過程に、市民が関与する手続や制度としてどのようなものがあるかを調査し、そのメカニズムについて、判例分析や論文等の資料分析を行った。さらに、5月末から6月の初めに掛けて、アメリカ合衆国ハワイ州において聞き取り調査を行った。また、6月6日に開催されたアメリカ学会のワークショップにおいて、"Choosing Your Neighbor : How American Legal System Enables Americans to Decide Whom to Live With"と題する報告を英語で行った。後期の学部および大学院を対象とした「アメリカ環境法」と題する演習においては、土地利用と関係の深い環境問題に焦点を当て、判例分析や資料の講読を通して、環境問題との関係において、土地利用に関する公共的関与の必要性とその手法、あり方の可能性について考察する機会をもった。 本年度の研究作業は、これまでの年度における作業とは異なった広がりを獲得することに重点がおかれた。このため、新たな視角を獲得できたという意味では大きな収穫があったが、懸案であるアメリカ地方自治法の体系書の執筆については、法曹大学院開設に伴う授業の負担の増加もあり、初めて行う授業の準備等に大きな時間を割かれ、大きな進捗をみることができなかったことが残念である。
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