研究概要 |
無名契約そのものについての個別史料のデータ化は、平成8〜10年度科学研究費補助金・萌芽的研究のおいてすでに完成していたので、本年度は、それを基礎にしながら、伝来の個別契約との関連史料を整理し、かつ伝来の個別契約そのものの史料を収集・整理してデータ・ベース化することに、主力を注いだ。それに加えて、前記助成以後のパピルス史料および碑文史料の収集にも携わったが、期間内に予定していたすべての史料集を手にできたわけでななかった。またこの間、国内の研究会・学会での報告(8月25日「ローマ法における無償法・互酬法」於北海道大学、10月6日「デイオクレーティアーヌス帝は『古典法』墨守者か?」於龍谷大学、3月15日「D. 13, 1, 14(Iul. 22dig.)」於京都大学)、海外の学会参加・外国人研究者との会談・史料収集(国際ローマ法学会Convegno internazionale di Diritto Romano 2002、6月3〜10日、於イタリア・コパネッロ、Hans ANKUM ; Mario TALAMANCA両教授等との会談)を行ないつつ、論点整理を行なった。 その結果、和解に関して一定の成果を得た -従来、和解の契約的保護は6世紀のユースティーニアーヌス帝期になされたとされていたが、『勅法彙纂Codex』を仔細に検討していくと、3世紀中ごろに前書praescripta verbaを利用しながら契約的保護の第一歩を踏み出したと考えることができ、従ってその限りで「裸の合意は訴権を発生させない」との伝来の契約法上の原則が破られている。
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