研究概要 |
今年度は、前年度の研究を受けて立てた「研究実施計画」中の3点を中心に研究を進めた。第一に、前年度に入手できなかった史・資料の欠落を補いつつ、その整理・データベース化を継続し、とりわけIVRA掲載の文献・非文献史料の整理をほぼ完成した。 第二に、個別に法的承認を得て集積していった「無名契約」は、伝来の契約といかなる理論的関わりの中でその存在を認められ、またそれらを「無名契約」またはそれに類似の概念によって統合する発想が登場したとすれば、その際の規準およびこれを支える思想が何だったのかなどについて理論的検討を開始し、継続中であるが、一方では方式書訴訟制度から特別審理手続への変化、他方では国家体制の変化・変質、経済的要因の変化が背景として伏在していることが看取された。しかし、特に経済的要因は個別類型ごとに異なっており、詳細な考察をしなければならない。 第三に、第一および第二の作業進展のためにも、国内外での研究会・学会での報告・参加を今年度も積極的に行った。たとえば外国においては、「コンスタンティーヌス国際学会」(6月12〜14日、イタリア)、「古代法国際学会」(9月16〜20日、フランス)に参加し、それぞれ契約法の専門家(例:H.Ankum, G,Crifo, M.Talamanca)と前記テーマに関し議論を行い、前者においては特に国家体制の変質について、後者においては特に法源と経済的、社会的背景との関わりについて考察を深めることができた。
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