研究概要 |
1.「安楽死」に関する理論的研究の深化 昨年の研究に引き続き,欧米型の自己決定権中心の終末期論の特色及び問題点を析出するために,そのタイプの終末期論の典型例の一つであるオーストラリアでの議論を考察した。その際,「安楽死」の制度化をめぐって激しい議論が展開されたオーストラリア議会(上院)での議論および委員会レポートを考察対象とし,そこで展開されている安楽死に対する賛成論と反対論とを批判的に検討して,拙稿「オーストラリアにおける『安楽死』の制度化(2)」にまとめた。この論稿の(3)として,自己決定権中心の終末期論の問題点と,その終末期論に対比されるべき家族基底的終末期論の可能性を考察する予定である。 2.「安楽死」に関する実証的研究 本年度は,昨年の東アジアでのアンケート調査の準備段階を経て,韓国において医師の安楽死に関する意識調査を行った。韓国のウルサン大学のKoo教授の協力を得て,韓国の医師約100名に対するアンケート調査を行った。昨年同様に調査にいたる過程や実施段階で,研究体制や研究費の使用法,さらには諸慣習の相違から,種々の異文化間の相互理解の困難さから生じる問題に直面したが,何とかアンケートに対する100名の回答を得て,そのデータを現在解析中である。 3.海外での研究発表および意見交換 これまでの研究成果をインドで開催された生命倫理学関係の国際学会で「Euthanasia and Bioethics(安楽死と生命倫理学)」という表題で報告した。色々な国の研究者から多様なコメントを得ると共に,この分野ので情報交換を行うことができた。
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