1989年東欧革命をポーランドと共に先導したハンガリーの変動・転換過程は、1956年革命=人民蜂起の体験を前提とするものであった。本研究が、戦後ハンガリー国制史の特質を究明するにあたって、1965年及び1989年の両革命とその間における鎮環ともいうべき諸改革を総体として把握するという方法を探る根拠もこれに由来する。かかる研究の企図に従って今年度は主として、1956年・1989年両革命に関わる原資料を可能な限りひろく発掘・収集することを目途とした。幸い1990年代以降今日までの民主化過程を通じて、ハンガリー語・ロシア語・英語等による未発表資料が公刊されつつあり、またハンガリー、ロシア連邦でこれら新資料に基づく研究も発表され始めている。 今年度は、早稲田大学特別研究課題研究費によるBudapest研究出張による現地での資料収集・調査による研究成果をも得て、両革命の社会変動・国制改革に関する資料分析を行い、次年度以降の研究のベースを構築することができた。また1956年革命に直接関与した哲学者G.ルカーチの1941年モスクワ逮捕事件の全容をあらわすアルヒーフ資料(1999年ロシア語版、2002年ハンガリー語版)の詳細な検討を継続している。
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