研究概要 |
本研究の最終年度として,第一に戦後ハンガリー国制史の統括的検討を進めつつ,第二に,体制転換期の実証的事例分析のために,1989年以降の権力分立システムに関す分析を行った。いずれも初年度及び第二年度における資料収集,研究レヴューを含む,歴史研究,さらにG.ルカーチ,I.ビボー,I.コヴァーチ等の基本学説の検討、1990年を中心とする現状分析を踏まえたものである。第一の課題については,ハンガリー国制の歴史的特質を示すLawful Revolution概念を基軸として,戦後人民民主主義革命,1956年の民族独立民主主義革命,及び円卓会議を基礎とする1989年市民革命という「三つの革命」が,自由と民主主義,法治主義と立憲国家,そして人民主権と国家主権を政治的・社会的目的とする連鎖状の継続的変革としてあることが明らかにされた。また第二の課題に関しては,議会制民主主義の再建,及びハンガリー初の憲法裁判所について,その制度的特質と活動内容を比較憲法論の視角から考察した。第一次大戦後に世界に先がけて創設されたオーストリア・チェコスロヴァキアの憲法裁判所制度史との比較研究が,その際の力点であった。なお今年度に実施せれた研究レヴューにおいて,法学研究所のZ.ベーテリ,A.プラジョヴァ両博士,政治学研究所のK.クルチャール前所長より貴重な御教示を得たことを付記する。
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