ハワイ先住民法体制について調査を行った結果、以下のことが明らかになった。すなわち、アメリカ合衆国最高裁判所は、レーンキスト・コートになってからインディアン法の独自性・自律性を否定ないし縮減する方向に動いており、Office of Hawaiian Affairsの理事選挙の被選挙権を先住民に限定するハワイ州法を違憲とした2000年のRice v. Cayetano判決はハワイ先住民についてその方向性を明らかにした判決と見るべきこと、同判決の明示および黙示の論理に従えば、とりわけハワイ先住民のように連邦政府からIndian tribeとして承認されていない民族の場合には、一切の特別処遇が合衆国憲法違反とされるおそれがあること、他方、それに対抗するため、同判決以降、ハワイ先住民自身が、アメリカ本土のIndian tribeと同様の準主権的権能を持ったNationとしての地位を確立すべく連邦議会への働きかけを強めると同時に、自治政府を樹立するための先住民自身の準備として、個々の先住民をNationの構成員として組織するための登録運動を進めていること、などである。 ハワイ先住民とアイヌ民族を比較した場合、中央政府によって特別な法的地位を承認されておらず、それゆえに特別処遇が憲法の平等原則違反とされうるという問題を抱えているという共通点があるが、他方で、可視性の点などで差異があり、また、自ら求める権益を明らかに主張し、その実現のために積極的に行動するという点でも落差があるといわざるを得ない。とりわけ、ハワイ先住民が、民族内部に様々な異なった意見を抱えつつも、直面している問題の解決に向けて、州政府との緊密な関係を維持しつつ、非先住民との協調も視野に入れ、決して容易ではない自らの組織化に主体的に取り組んでいることに注目すべきであるように思われる。
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