英国の情報公開法は、2000年11月30日に制定されたが、その施行は、5年間の準備期間を設けて、段階的に実施される。その施行準備に責任を負う大法官(The Lord Chancellor)が発表した施行予定表によれば、公的機関が保有する情報の開示請求権(第1条)を含めて、全面的な施行に移されるのは2005年1月とされ、2001年以来、全面施行のための各種の準備作業が、精力的に計画・実施され今日に至っている。 施行準備に責任を負う政府機関は、当初大法官府(The Lord Chancellor's Department)であったが、2003年6月の改組によって新設された憲法問題担当局(Department for Constitutional Affairs)に引き継がれた。これら担当機関と法第18条によって設けられた情報コミッショナー(Information Commissioner)との協力と指揮の下で施行準備作業が進められてきたのであるが、膨大な施行準備作業の計画立案及び実施を実質的に担ってきたのは、両者の下に設けられた「情報公開法実施のための諮問グループ」(The Advisory Group on Implementation of the Freedom of Information Act)である。公的機関の代表者や市民運動団体の代表者、学者、マスコミ、専門的担当職員等で構成され、主務大臣と情報コミッショナーによって共同主宰される、この諮問グループは、2002年の1月以来2004年の2月までに8回の会合を重ね、施行状況の調査・検討や実施にむけての啓蒙・訓練・教育等の諸計画の立案、更には大法官の議会への年次報告の審議など広範囲な活動で担当機関と情報コミッショナーの施行準備活動を支えてきた。これらの施行準備課程の分析・検討を目的とする本年度の研究は、まず、この諮問グループ会議の議事録や会議資料及び上記大法官の三次にわたる議会への年次報告を手がかりにして、施行準備の概要把握に努めるとともに、夏期休暇を利用しての調査旅行によって、市民運動団体(Campaign for Freedom of Information等)との意見交換を試みた。しかし、施行準備のための最終年度(2004年)が残されていることもあって、その全体像を把握するには至らず、また、そこに内在するであろう問題点の解明も依然として今後の課題として残されている。
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