英国の情報公開法は、2000年11月30日に制定されたが、4年余の準備期間を通じて段階的に実施され、公的機関が保有する情報の開示請求権が全面的な施行に移されるのは2005年1月とされた。 本研究は、この4年余にわたる施行準備過程の諸作業を概観し、その特徴や問題点を探ること、そのことを通じて、情報公開法制の比較法的研究対象を拡げるとともに、「議院内閣制」という共通する政治制度の下での日英両国の情報公開法運用の比較研究や相互交流の発展にも寄与することを目的とするものである。研究は、主として主務大臣の年次報告、及び主務大臣等の施行準備作業を支え、援助するために、研究者や市民運動団体代表等をもメンバーとして設置された「情報公開法実施のための諮問グループ」の会議議事録等の資料により、「所管官庁と施行準備組織」、「実施=施行日程」、「施行準備過程の概要」等を把握し、それに基づいて施行準備過程におけるいくつかの特徴や問題点を指摘した。しかし、主務官庁が大法官府から新設の憲法問題担当省に変更し、準備作業の組織と計画の見直しがなされた2003年7月以降の経緯、特に準備作業が急激にかつ集中的に進展した2004年から2005年1月の施行に至る経緯については、研究期間が2002~2003年度に限定されていたことや、諮問グループの議事録の欠如(未公表)等もあって、概要の把握が不十分なものになっている。今後の英国情報公開法の運用状況の研究とも関連させて、施行準備過程を再点検・再検討する必要がある。
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