本研究は、I.ポスト冷戦期における米国の国家安全保障法制の変容と構造転換について、(1)市民の「安全」観の変容との相関関係、(2)対テロ/対サイバーテロ政策の形成・変遷過程、(3)大量破壊兵器技術の拡散防止、重要インフラストラクチャーのサイバーテロからの防衛、経済情報・軍事転用可能な汎用科学技術情報の漏洩防止のための通信傍受・サイバー監視技術への軍事技術革命(RMA)の影響、II.(1)テロ/サイバーテロを監視し防止するためのサイバー監視法制ならびにテロリズム対策法制、(2)テロ支援国ならびにテロリスト組織を対象とする武力報復立法等の、立法事実、政策目的の妥当性と有効性、対テロ法制によるプライヴァシー権などの市民的自由の侵害状況や「国家の安全」と「個人の安全」の乖離状況などについて実証的に解明することを目的とする。 平成16年度は、平成14年度・15年度に引き続き、米国の国防、外交、諜報活動、サイバーテロリズムや大量破壊兵器(WMD)テロリズムを含むテロ対策立法、ことに、2001年愛国者法(USA Patriot Act of 2001)やその拡大強化を目指した第2愛国者法案(Domestic Security Enhancement Act of 2003)の運用実態ならびにタリバン兵・アルカイダ構成員に対する軍事審問委員会での裁判等に関する、大統領命令、国家安全保障会議指令、国防総省・国務省・司法省・FBI・CIA等の行政府文書・資料、(2)国家安全保障関連立法、連邦議会各種委員会記録、連邦議会会計検査院(GAO)や連邦議会技術評価局(OTA)などの報告書等の立法・議会資料、(3)国家安全保障に係わる連邦裁判所判決および訴訟記録、盗聴許可令状の発付統計などの資料等を、米国最大の法律出版社WEST社がオンライン上で提供する有料データベースWEST LAW等や関連する原書文献・論文等の二次資料をも収集し、文献実証の手法により分析を行った。
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