(1)納税者が負う租税リスクは、次のようなリスクがある。(1)調査リスク、(2)課税リスク、(3)争訟リスク、(4)私的取引阻害・変更リスク。まず、調査リスクとは、税務行政庁による質問検査権行使として臨場調査が行われることにより、私的生活の平穏が乱されたり、調査に対する対応により、社会的信用が害されたり、予期しない課税につながりうるリスクである。次に、納税者の租税リスクとして最大のものが課税リスクであり、それは、申告を否定され、予期しない税負担が課されるリスクをいう。第3に、争訟リスクは、課税処分をめぐって行政不服申立や取消訴訟を行わなければならないことによって、時間と費用がかかり、勝訴の見込みが立たないなどのリスクを総称する。最後に、私的取引阻害・変更リスクは、当初において予期しなかった課税処分が確定した場合、その課税処分の趣旨に鑑みて、すでに行われた私的取引を解消、又は変更しなければならないリスクである。 (2)調査リスクは、調査開始前に回避することは困難であるが、調査後、税務行政庁との協議を通じて、合意をはかることによって双方満足のいく解決策を模索することが考えられる。ただし、調査過程での合意には法的拘束力の点で実効性が弱い。 (3)課税リスクの解消方法は、移転価格税制の事前確認制度に象徴されるような合意を使った例が考えられる。 (4)争訟リスクについても、合意、すなわち和解により回避することが考えられるが、租税法律主義との抵触があり十分に機能しない。
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