本年度は、日本およびドイツにおける電子政府化の進展状況を調査するとともに、その法的、行政管理的観点などからの課題を検討し、整理する作業を中心に研究をすすめた。この作業を通じて、アメリカ、カナダ、シンガポールなどに比べて比較的発展が遅れているが急速に電子化を進めつつある日独の状況が明かになり、また、両国の電子政府化をめぐる法制度的な整備の状況についても、その準備、制定過程を明かにして、次年度以降の研究作業の基礎作業を終えることができた。この研究調査の内容については、ドイツについては、日本語で論文を執筆したほか、日本については、ドイツの電子政府化のプロジェクトであるMedia@Komm(メディア・アト・コム)の随伴研究(ハンブルク大ハンスブレドウ研究所主催)の分担研究として英文のレポートを執筆した(成果は年度末時点では未刊のため業績としてあげることができなかった)。 また、本年度の研究の中では、特に、電子政府の重要な基盤のひとつである電子署名法制を取り上げ、これについても、日独比較の観点から、電子署名法制を検討し、それぞれの成果を論文としてまとめることができた。日本の電子署名法および公的認証制度など署名関連法制については、主として電子署名法の課題について検討した成果を公表したほか、ドイツ語でも電子署名法制の現状と課題について検討した論文を、ドイツの電子署名法研究の第一人者であるアレクサンダー・ロスナゲル教授(ドイツ、カッセル総合大学教授)との共同研究を通じて、ドイツの法律雑誌に掲載し公表した。また、ドイツの署名法制の特徴やその展開についても、従来から行ってきたマルチメディア法研究の作業の延長として、最近までの状況を検討し、その結果を公表したほか、電子署名を基礎としながらドイツで進められている電子政府化、行政手続の電子化対応の状況と特徴、その課題を検討し、これについても公表を行った。特に、電子的行政手続に関する日独の違い(ドイツでは民間認証機関を基礎とするのに対し、日本は多様な認証サービスを利用するなど)を明かにし、また行政手続法上検討を要する点も明かにしえたと思われる。
|