電子政府化の改革は、実務レベルでは、計画的・組織的に進められており、すでに2003年度末において、国のレベルでは広範な電子的な手続が可能になってきている。本年度の研究では、こうした電子政府・電子的行政手続の実現のために必要となる、行政関連法制の改正と適合化の現状を把握した上で、その法的な課題を明かにする作業を行った。 第一に、行政手続オンライン化法の内容について検討し、特に、送受信方法の種類(メールによる送受信の可否)についての解釈の可能性、Webによる手続の場合に不利益な処分通知では限界があること、電子文書と紙文書の媒体変換についての規定・手順の欠如、長期的な電子文書の原本性を保持したままでのアーカイブシステムについての検討の必要性があることなどについて指摘を行った。今後の早急な対応が求められる課題である。 第二に、電子的な行政手続の前提として、現在の電子署名法が持つ問題点や課題について研究し、長期的な署名検証可能性の不十分さ、認証事業者の破産等業務休止への未対応、経済基盤要件のなさ、仮名署名の不認知、時刻認証・属性認証の未認知、個人情報保護のための規制の不十分さなどについて改善すべき問題点を指摘した。 第三に、ドイツにおける電子政府と電子的な行政手続の実現のための法改革を調査し、そこからわが国が学ぶべき点を明かにし、中でも標準化や標準的な管理手法については詳細に検討・紹介を行うことができた。 最後に、広義の電子政府化の改革に含まれる電子的な訴訟手続の整備について、あるべき訴訟法改正の内容と、電子的訴訟手続を認めるに際して必要な考慮事項について検討を加えた。
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